名言と原典

名言の意味はどう確かめる?原典と前後の文脈の読み方

執筆・編集:あなたに贈る名言 公開 更新

名言の意味を確かめたいときは、作者名だけでなく、元の作品の前後を読むことが手がかりになります。誰の発言か、何の話か、条件や反論が続いていないか。この三つを確かめると、一文だけでは見えなかった意味に近づけます。原典を開いてからの読み方を、一緒にたどってみましょう。

続きの一文が、意味を変える

説明のために、架空の文章を考えてみます。「まずは続けてみよう。ただし、自分を傷つけてまで続ける必要はない」。最初の一文だけを読めば、続けることを強く勧める言葉に見えます。二文目まで読むと、続けることよりも大切にしている条件が分かります。

これは、長く引用すれば必ず正確になる、という話ではありません。大切なのは、何を省くと意味が変わるのかを知ることです。「しかし」「ただし」「たとえば」の前後には、賛成から反対へ移る場所や、話の範囲を狭める条件が隠れていることがあります。

作者も、一つの答えにとどまっていない

芥川竜之介は『侏儒の言葉』の序で、この作品は自分の思想をそのまま伝えるものとは限らず、思想の変化をうかがわせるものだと説明しています。短い文章を、いくつもの方向へ伸びる蔓草にたとえているところも印象的です。

この序を読んでから本文を開くと、断定の強い一節も、考えが動いている途中の一場面として受け取りやすくなります。一文だけを掲げて「この作家は、いつでもこう考えていた」とまとめてしまうと、その動きを見落とすかもしれません。これは、このサイトが序から受け取る読み方の一つです。

参照:資料1

原典を開いたら、三つのことを見る

まずは話している人を確かめます。作者の説明なのか、登場人物のせりふなのか、別の人の意見を紹介しているのか。次に、その段落の話題を見ます。勉強についての文章なのか、仕事についてなのか、ある時代の社会についてなのか。最後に、結論の前後に条件や反論がないかを読みます。

出典ページを開いたら、ブラウザーのページ内検索で特徴的な言葉を探し、見つかった場所の前後を読み進めると探しやすくなります。本文のほかに、章の見出しと、末尾にある初出・底本の情報にも目を向けてみてください。同じ題名でも版や表記が違うことがあるので、見つからないときは短い語句で探し直せます。

全文を一度に読めなくても、そこで読むのをやめる理由にはなりません。前後の数段落から始め、疑問が残ったらその章へ広げる。一文の意味を確かめるための読書は、そのように少しずつ進められます。

自分への響きと、作品の意味を並べておく

昔の文章から、作者が直接扱っていない今の悩みを考えるきっかけをもらうことはあります。その受け取り方まで捨てる必要はありません。ただ、「作品では何を述べているか」と「自分は何を連想したか」を二つに分けておくと、どちらも大切にできます。

たとえば読書メモに、原文が扱う話題を書き、その隣に、いまの自分に重なった場面を書く。人へ紹介するときにも、作者の主張を説明するのか、自分の感想を話すのかが伝わりやすくなります。言葉に共感することと、その言葉を正確に紹介することは、いっしょに育てられるものです。

出典・参考資料

  1. 芥川竜之介『侏儒の言葉』全文(青空文庫)

    冒頭の「侏儒の言葉」の序を参照。架空の例文と読書メモの方法は、当サイトによる説明・提案です。